〆切を守れないWebライターが「〆切を守らずに」仕事する方法

「夏休みの宿題に最終日になって取り掛かるようなやつはライターに向いていない。ライターにとって最も大切なのは文章力ではなくて、納期を守ること。〆切を守れない人にはライターの適性がない」

といった意見は間違ってないし、そのとおりだとしか言いようがない。しかしそんな正論によって〆切破り魔が更正するのであれば誰も苦労しないのである。

およそ仕事の苦しみを分類するならば

  1. 厳しい納期
  2. 責任の重い業務
  3. 人間関係の不和

の3つに分かれる。

僕自身も〆切に追われるのがかなりの精神的苦痛で、胃を悪くしたことがある。スケジュール通りに物事を進めるのが本当に苦手で、その意味では僕もライターとしての適性がない。

安易に仕事を引き受けて納期に苦しむのが嫌すぎて、当ブログのメールフォームページにも

『※現在、お仕事のご依頼につきましては特別な事情のあるものを除き受付を停止しております。何卒ご容赦ください。』

と明記している。SNSで『お仕事募集中』もやったことがない。〆切を守れずクライアントさんに迷惑をかける未来が見えているからである。

そんなんでよく専業Webライターを6年も続けて来られたな、と思われるかもしれない。じつはそこにカラクリがあって、当ブログ100記事記念としてご紹介したい。

〆切を守れないWebライターが「〆切を守らずに」仕事する方法

〆切に振り回されずに仕事をするためには、まず因果律を逆転させ、〆切の存在そのものを消滅させることである。

図のようにクライアントから依頼を受け、成果物を完成させるまでの期限が〆切となる。

であれば「クライアントから依頼を受ける」から「成果物を完成させる」までの距離をゼロにしてしまえば、そもそも納期や〆切は発生し得ない。

そう、依頼を受けてから原稿を書くのではなく、原稿を書いてから依頼を受ければ良いのだ。

依頼される時点で、原稿は出来上がっている。〆切を守れるだとか守れないだとか関係なしに、すでに仕事は終了しているのである。

具体的な手順としては

  1. Webライターを募集・外注しているWebサイトをリサーチし、そのサイトが欲しがるであろう記事を書く
  2. サイト運営者に「記事を買いませんか?」と営業をかける
  3. 価格交渉後、納品

で完了となる。

この方法のWebライター側のメリットは

  • 完成記事の売り切り方式のため、納期に追われるストレスがない
  • 自分のペースで自分の書きたいものを書ける
  • 記事クオリティに自信が持てるのであれば価格交渉を有利に進められる(交渉決裂すれば競合サイトに記事を売りに行くこともできるため)
  • コミュニケーションコストを最小限にできる
  • 「思っていたのと違う記事を納品された」みたいなミスマッチを事前に防げる
  • 仮に買い手がつかなくとも、自己運営メディアに用いることでマネタイズできる

そしてクライアント(サイト運営者)側のメリットは

  • すぐに記事が手に入る
  • 記事を読んだうえで、それを買うか買わないかを判断できる
  • すでに成果物ができあがっており、ハズレライター(〆切が来ても納品せず音信不通になるようなWebライター)を引く心配がない
  • うまくやれば値切りできる
  • コミュニケーションコストを最小限にできる
  • 「思っていたのと違う記事を納品された」みたいなミスマッチを事前に防げる

ライター側のメリットがそのままクライアント側のメリットとなり、まさに双方良しの関係となる。

もちろんこれは上級者向けの仕事術であり、「需要のある記事」を書くことができなければ、買い手を見つけるのに難儀するだろう。

しかし〆切も予算上限もないのだから、たっぷり時間をかけてハイクオリティかつ高く売れる記事を完成させれば大丈夫。

なお上記の営業でうまくいくと、十中八九クライアントさんから

「素晴らしい記事をありがとうございます。良ければうちのメディアのライターとして定期的に記事を書いていただけませんか?」

と継続発注の提案を受けることと思う。

ここでとても重要なのは、〆切を守れない自覚のある人は、この提案を絶対に断らなくてはいけない。

ここで下手に安請け合いしてしまうと、結局また〆切に追われて苦労するし、最終的にクライアントさんに迷惑をかけてしまうことになる。

なので正直に、自分は納期を守るのが苦手で引き受けられない旨を伝える。

そのうえで「また記事が書けたら優先的にお声掛けしますので、そのときにもし宜しければ買っていただけたら嬉しく思います(もちろん買っていただけなくとも全然構いません)」といった双方が負担とならない《ゆるい協力関係》を相手方と結ぶのが得策だ。

自分が〆切守れないダメ人間であることを自覚したうえで、そこを強みに変えよう。

「私は〆切の発生するライティング依頼は絶対にやらないんだ!」という強い覚悟を持ったうえで、〆切を発生させずにWin-Winで仕事ができる環境を模索するのがポイントだ。

他者には簡単にできるのに、自分には当たり前にはできないことが、世の中にはたくさんある。決められた時間に起きることであったり、人と目を合わせて会話することであったり、〆切を守ることであったり。

他者と自分とを比べて劣等感を抱くかもしれないが『できない』は武器へと変えられる。より正確に述べるならば、『できない』をベースに生存戦略を考えてゆくわけである。

ちなみに上記のやり方を発展させれば、さらに大規模なビジネスとなる。

Webライターの一般的な収益安定化戦略は、記事を継続発注してくれるクライアントを見つけることである。Webライターは単に指示通りに記事を書くのではなく「クライアントと共にWebメディアを育てていく」という意識を強く持つ必要がある。

しかしすでに述べたとおり、長期継続案件は〆切守れない人間にはつらい。

そこで発想を逆転させると「Webメディアを自分で作ったうえで、そのメディアを丸ごと売っぱらってお金を得る」方法に行き着く。

いわゆるサイト売買である。

小規模なサイトでも10万円くらいで売れるし、大規模なWebメディアであれば数百万、うまくやれば数千万円で売却できるのがサイトM&Aの世界だ。

話が長くなったのでこれについては別の機会に紹介したい。

まとめると、

「クライアントから依頼を受けて納期までに記事を納品すること」が苦手で苦手で仕方のない人は、発想を転換し「記事やサイトを完成させてから、買い手を探す」戦略を試してみると良いと思う。

自分のできないことをベースに戦略を立て、できることで戦っていこう。

(了)