フリーランスからサラリーマンになった僕が語る双方のメリット・デメリット雑感

サラリーマンからフリーランスになるブロガーが多いなかで、僕は珍しく(?)フリーランスからサラリーマンへの転身を果たした。派遣社員だけど。

元よりフリーランスになるつもりはなく、大学時代から就職活動に励んでいたものの、百社近くから不採用通知を受けやむなく独立したタイプの人間だ。

そのあたり詳しくは拙作『ぼっちの就活日記』を読んでくれたら嬉しく思う。嬉しく思うと言っておきながら実際に他者に読まれたら恥ずかしくてベッドの上をのたうちまわる黒歴史である。

人間関係

今の勤務先は人間関係は決して悪くはない。IT企業でプロジェクトとしては炎上しているものの、上司はフレンドリーで先輩も優しく、和気あいあいとまではいかなくとも時折、談笑の声が聞こえてくるくらいには空気が良い。

しかしながら、もともと対人恐怖症でバスにも乗れなかった身とすると、誰かと同じ空間で働くというのはやはり精神的負担の大きいところがある。

毎朝の通勤列車など、富士急ハイランドで一番怖い絶叫マシンに乗り込む覚悟で乗っている。満員電車と比べれば、富士急ハイランドの絶叫マシンの方がよっぽど安全だし安心できる。

対してフリーランスであることの大きなメリットは「ひとりぼっちの環境で働ける」ということだ。あのクレイジーで狂気的な満員電車に乗らなくて済むだけでもこの利点はでかい。

精神的事情でどうしても他者と共に働くのが難しい場合、人間のたくさんいる場所に行けない場合(かつての僕がそうであったように)は、フリーランスで働けるのはある種の救済的な選択肢であり希望となり得る。

同僚も上司もいないフリーランスでは、主に『顧客(クライアント)』とのやりとりが人間関係の多くを占める。

上司と相性が合わなくてもチェンジするわけにはいかないが、クライアントとの関係であれば今後の取引をお断りするといった形で関係を切ることができる。

スキルアップ

サラリーマンとフリーランスのどちらがスキルアップできるかは一概に比較できないところがある。

IT企業で働く場合、個人ではとても請け負うことのできない大規模なシステムの開発にも関わることができ、勉強にはなる。デザイナー、プログラマー、エンジニアの方々と日頃からやりとりすることで、自分が今まで興味のなかった分野の知識も自然と身につけられる。

仕事ができなかったら周りにかける迷惑が計り知れないので、職務に関連する技術は(追い立てられるようにして)爆速で身につく。

一方で、技術的負債が積み重なって、たくさんの呪いと混沌を生み出し始めた怪物とも向き合わなければならず、そうした案件に立ち向かって得られるものは(スキルよりも)徒労の方が大きい。

プロジェクトリーダーを含め、もはや誰ひとりとしてプロダクトの全容を把握できる人間がいない。大きくなりすぎて制御の効かなくなったクジラを個々人が各々の方向に引っ張って、なんとか導こうとしている。でもそのたびにクジラはさらに巨大になり暴れ出すのだ。

帰宅時にはヘトヘトに疲れ果てていて、勉強どころではない。

フリーランスであれば、ヤバそうな案件にはそもそも近寄らないし引き受けない。万が一に抱え込んでしまっても、早々に逃げ出すことができる。

しかし一方、個人事業主は自由を手にする代償にすべての責任が自分に返ってくる。

「自分にできない仕事は引き受けない」はフリーランスとしてうまくやるための処世術ではあるものの、これだけだとスキルの幅を狭めてしまう。

収入

フリーランスだった頃は「毎月安定して給与が貰える会社員はいいな」と思っていたし、サラリーマンの今は「このレベルの労力を費やすのであればフリーランスの方が稼げるのに」と思う。いつだって隣の芝生は青いのだ。

フリーランスは自己管理が圧倒的に難しい。

夏休みの宿題を計画通りにできず、8月31日の夜になって泣く泣く取りかかる僕のような人間がフリーランスになってしまうと、自己管理が甘々になりすぎて、それはイソップ寓話に出てくるアリとキリギリスのキリギリスみたいに、あとあと生活に困窮することになる(実体験)。

たとえキリギリスでなくとも、大口の顧客から突然に契約を切られてしまったり、報酬を踏み倒されてしまったり、クライアントが音信不通になってしまったり、そういったトラブルは個人で事業をやっているとままあることだ。

仕事だってコンスタントに得られるわけではない。忙しいときに限って死ぬほど案件が舞い込んでくるのに、台風が過ぎ去るとパタリと仕事がなくなり、将来への漠然とした不安に襲われながら次の案件を探し出さなくてはいけない。

その意味で、強制的に労働をさせてくれる会社の存在はありがたい。ありがたくはないけれどありがたい。毎月一定額の給与が貰えるというのは本当に。

総括

正直なところ、毎朝6時に起きて満員電車に乗って8時間(残業も含めれば10時間)も勤務しての生活を何年も続けられるサラリーマンすごすぎるだろうと思うし、一方でフリーランスで生計を立てるのもそれと同じくらいに大変ですごいことだと思う。

僕はそのどちらもが中途半端で、未だに生きる道を定められずに揺れ動いている。

中学生の頃に漠然と頭のなかに思い浮かべていた《はたらくおとな》になるのがこれほどまでに自分にとって難しいとは、想像ができなかった。

それでも人は生きてゆくしかないのである。

(了)

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当記事の執筆者
五条ダン

研究対象は《ナメクジオバケ》。「現実は甘くない。だからこそ甘さが必要である」をモットーとする。修辞技法(レトリック)の分析を得意とし、文体に重きを置く創作スタイルを好む。しかし筆速はナメクジの歩みのように遅い。

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