新条アカネ(SSSS.GRIDMAN)と梓川かえで(青ブタ)の共通性についての考察

初めに、当記事にはアニメ「SSSS.GRIDMAN」および「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない(おるすばん妹の夢を見ない)」最終話までのネタバレが含まれる。すでに視聴済みであることを前提に話を進めるゆえ、未視聴の方はブラウザバックされたし。

共通する問いかけ

新条アカネと梓川かえでの物語は

  • 『自身の創作物によって自己を救うことはできるか』
  • 『創作による自己救済は可能なのか』

という共通の問いかけを内包している。

これについてはサブブログ(下の記事)で以前に書いたとおりだ。

新条アカネについて図解をするとこのようになる。

新条アカネは、三次元世界の住人であった。

アカネが現実においてどのような悩みや問題を抱えていたかは知ることができない。学校で友だちができずひとりぼっちなのかもしれないし、引きこもりで学校に行けないのかもしれない。

なんにせよ、アカネはおそらく自分を救うために、六花のいる虚構世界を《創造》した。

六花はアカネの生み出した創作物に過ぎないが、創作世界において彼女の壊れかけた精神を救うことに成功した。

しかし、もともと異なる次元に住まうアカネは、六花と同じ世界に居続けることができない。六花からプレゼントされた定期入れを形見に、アカネは現実世界に帰還する。

自身の創作をもってして、自身に立ちはだかっていた壁を乗り越えた話と受け取ることもできる。

すなわち、自身の創作物によって自己を救うことはできるか、創作による自己救済は可能なのか、というひとつの問いかけである。

青ブタの梓川かえでについても話の構造としては、新条アカネの場合と類似している。

梓川花楓はいじめが原因で学校に通えなくなっていた。また、思春期症候群という未知の病を発症していた。

新条アカネと異なり、花楓は自ら望んでそうしたわけではないが「かえで」という新しい人格を《創造》することにより自分を助けようとした。

そしてGRIDMANにおいて、三次元の住人と二次元の住人が決して同じ世界で暮らすことができないのと同じように、花楓とかえでは《記憶》を共有することができなかった。

二次元世界で生まれ変わったアカネは、六花・裕太・アンチ君たちに救われた。新しい人格として誕生したかえでも、兄の支えや麻衣さんとの交流を経て、電話に出られるようになり、外に出られるようになった。

目標を遂げた《かえで》は日記帳を形見に遺して、元の《花楓》へと帰還した。

SSSS.GRIDMANにしても青春ブタ野郎シリーズにしても、その物語の基本構造はファンタジーの原型たる「行きて帰りし物語」であり、その応用型であるといえる。

SSSS.GRIDMANは響裕太が表向きの主人公ではあるけれども、物語構造としては新条アカネこそが主人公だった。

行きて帰りし物語において大切なことは2つあって

  • 境界線を越えること
  • 元の世界に帰ってくること

だ。

指輪物語でもナルニア国物語でもはてしない物語でも、主人公はとにかく境界を越えて日常から非日常に足を踏み出す。

そして創作世界で成長した主人公は、現実世界に帰ってくる。多くの場合、それは創作世界の住人との別れを意味するので、去り際に主人公は《形見》を貰い受けるケースが多い。

その形見を糧にして、現実世界でも前に進んで生きてゆける。

私たちが小説を書く、その行為もまた《行きて帰りし物語》と似ているのかもしれない。

多かれ少なかれ、自分の書く物語に、自分自身を救う力があるのではないか、自分自身を成長させる力があるのではないかと、心の何処かで期待している。

そして原稿を完成させて、現実世界に帰還する。

物語を書く前の私と、書いた後の私は、はたして何も変わっていないだろうか。

  • 『自身の創作物によって自己を救うことはできるか』
  • 『創作による自己救済は可能なのか』

その問いへの答えは、SSSS.GRIDMANや青春ブタ野郎シリーズのなかにあると私は考えている。アカネにとっての定期入れが、花楓にとっての日記帳が、あなたにとっての小説原稿になるのではないか――と。

後記

この記事はじつのところ、青ブタ最終話のショックをやわらげるために、藁にもすがる思いで書いている。

私としては「おるすばん妹」の話はとてもつらくて受け止めることができず、12話を見た一週間前からもうずっと落ち込んでいる。立ち直れる自信がない。

ライトノベルにいかにも出てきそうな《妹キャラ》をあえて伏線とし、叙述トリックを仕掛ける。ほいほいと釣られてしまったシスコン豚野郎をフルボッコにする展開に、私の心は折れてしまった。

一介の視聴者に過ぎない私がこのザマなのだから、主人公の咲太が受けた精神的ショックはもはや計り知れない。

なんにせよ、今期アニメは良作揃いだったと思う。SSSS.GRIDMANと青春ブタ野郎、素晴らしい作品に出会えたことに感謝したい。

(了)

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当記事の執筆者
五条ダン

研究対象は《ナメクジオバケ》。「現実は甘くない。だからこそ甘さが必要である」をモットーとする。修辞技法(レトリック)の分析を得意とし、文体に重きを置く創作スタイルを好む。しかし筆速はナメクジの歩みのように遅い。

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