30分砂時計を使って小説の執筆管理をする

だらだらと何時間もかけて原稿を書くよりも、30分間集中して書いた方がずっと速く良く書ける。というのは物書きならば心当たりのある話だと思う。

「なんてこった! 今朝から6時間も執筆しているはずなのに、ちっとも原稿が進まないぞ!」と首を傾げるときは大抵、その半分近くの時間をツイッターやネットサーフィン等のマルチタスクで浪費してしまっている。

最強の時間管理術として知られる『ポモドーロ・テクニック』は短期集中体験を積むことを重視するメソッドで、原稿を一刻も早く書き上げたいときに活用できる。

ポモドーロ・テクニックとは?

ポモドーロ・テクニックは簡単に説明すると「25分間集中してタスクに取り組む → 5分間の休憩をする」を1セットとして繰り返す。至ってシンプルなメソッドだ。

25分単位でタスクに専念し、高い集中力を発揮できるフロー状態(ゾーン)へと追い込んでゆく。

キッチンタイマーやストップウォッチ、目覚まし時計でも何でも良いのだけれど、きっちり25分を計って、その間はどんなことがあっても原稿に集中をする。もちろんスマートフォンの電源は切っておき、ツイッターのページは絶対に開いてはいけない。

作家がホテルに缶詰になって原稿を書くのが「空間」による隔離であるとすれば、ポモドーロは「時間」による隔離。気をそらすSNSやゲームから自分を守ってくれる、いわば25分間の結界である。

ポモドーロ・テクニックについてはlifehackerの記事「今日から始める生産性アップ術。ポモドーロ・テクニック再入門ガイド | ライフハッカー[日本版]」の説明が詳しい。

平常時に自分がどのくらいの筆速で書けるのかを把握するのにも、ポモドーロによる執筆管理が役立つ。25分で平均500文字書き進めることがわかっていれば、5千文字の原稿を完成させるときにポモドーロ×10セットを作業目標として立てられる。

トランス状態を邪魔しない砂時計の良さ

私も原稿を書くときはポモドーロ・テクニックを愛用している。が、この方法は時折、小説執筆中にトランス状態に入れたときの邪魔になってしまうケースがある。

せっかくうまい具合に執筆の神様が降りてきてトランス状態に入れても、25分が経てばキッチンタイマーの音が鳴って、超・集中状態が解けてしまう。

「短時間に集中して原稿を書く」というノウハウは維持したまま、しかし「ふとペンを置き、気がついたら時間があっという間に過ぎていた」という体験を生み出したい。

仕事のタスクはともかくとして、変性意識を最大限に活用する小説執筆ではポモドーロにプラスアルファのアレンジが必要かもしれない。

そこでキッチンタイマーの代わりに30分砂時計を使うことを考えた。

30分砂時計
製品詳細→ BOJIN 30分砂時計(Amazon)

写真はAmazonで購入した1500円くらいの30分砂時計で、値段のわりに見た目もおしゃれなので気に入っている。実測サイズはおよそ幅8cm×高さ14cm

レビューを見ると子どもの勉強・食事・ゲーム・お片付け等の時間管理のために購入する人が多いようだ。

砂時計であれば「残り○○分」のデジタル表示やアラーム音で気がそれてしまう心配がない。心置きなくトランスに移行し「気がついたら30分がとっくに過ぎていた」という状態を作りやすい。

なので私の場合、業務タスクはキッチンタイマーで、小説執筆は砂時計で、ポモドーロ・テクニックを実践するようにしている。

ある種の「自己催眠暗示」の装置として

ベルが鳴ったらよだれを垂らすパブロフの犬のように、砂時計をひっくり返せば自然と集中状態になる。

そんな、自己催眠をかける魔術的小道具のひとつとして、30分砂時計はなかなか面白い執筆支援アイテムなのではないかと思う。

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