クラウドソーシングでよく見かける文字単価0.5円のライティング案件。手数料で20%も抜かれるから、時給換算だと数百円にしかならないことも多い。
下記のブログでは『時給にすると96円!』と低単価に嘆くWebライターの話が紹介されていた。
記事中で言及されるWebライターは『1200文字、報酬600円(手数料引きで実質480円)、調べ物に5時間を要するライティング案件』を受注したようだ。
記事品質が問われない低単価案件(サテライトサイト量産問題)
僕の知っている2013年頃は、この手の低単価案件はアフィリエイターがサテライトサイトを大量生産するために発注をかけていた。そして記事の品質はほとんど問われないのが通例だった。
だからおかしいのは報酬額ではなくて『調べ物に5時間を要する』の部分。こんなのは15分くらいでちゃちゃっと1200文字仕上げれば、そこそこ良い時給になるよね? というのが当時の感覚としてある。
逆説的に、クライアント側が文字単価0.5円で発注をかけるのであれば『どんなに低品質な記事が納品されたとしても文句は言えませんよ』の暗黙の了解を受け入れなければならない。
単価0.5円の記事をメインサイトに使うなんて、とんでもない話。安物買いの銭失いとはよく言ったものだ。それでサイト全体の検索順位が伸びなくて頭を抱えているクライアントさんが、たびたび僕のところにSEO相談へ来る。頼むから単価を上げてくださいと毎回言っているのだが……。
低単価で書かれた低品質な記事が、今日のインターネットを使いづらいものにした。ブラックアフィリエイターたちが負の遺産を残していったのは、言うまでもない。サテライトサイト量産のようなブラックハットSEOに、間接的にでもWebライターは加担すべきではない。
記事品質が問われる低単価案件(ゼロがひとつ足りない問題)
もしも『調べ物に5時間を要する』が本当ならば、やはり報酬のゼロの数が足りないと言わざるを得ない。600円は悪いジョークだ。6000円で最低ラインといったところ。
冒頭に挙げたピピピピピ氏のブログ記事では、こんな仕事するくらいならバイトした方がいいよね、みたいなことが書かれているが、たしかにそのとおりである。
僕は、データ入力のアルバイトをしたことがある。一日中、パソコンのテンキーで数字を打つだけのつまらない仕事ではあったが、時給1300円と給与は悪くない。
なんてったって楽な仕事で、マニュアル通りにキーボードをぽちぽちするだけ(といってもそれなりのタイピング速度が求められたが)。あとは職場に流れるFMラジオを聴きながら、とりとめもない妄想に耽っていたら終業のチャイムが鳴る。
真夏でも冷房の効いた涼しい部屋だったし、10分休みもちょくちょくあったし。あれ、僕が今現在置かれている労働環境よりもあのときのバイトの方が恵まれているのでは……、くっ、目から涙が……。
とはいえ、Webライター業をする人には、何らかの特殊な事情がある。(その内容は人それぞれ異なるが)アルバイトのできないそれ相応の理由があるから、やむなくWebライターをする人も多いと思う。僕自身もそうした事情についてはよく理解している。
ただそれでも、時給換算数百円のライティング案件には手を出すべきではない。
すごくリアルなことを言うと、文字単価1円未満の仕事を長く請けていると、将来の厄介ごとが増えてしまうのだ。数年後に好条件の文字単価で働けるようになってからも、かつての文字単価0.x円時代のクライアントさんとの人間的繋がりは残っている。
数年来、1文字0.5円で仕事を貰ってきたクライアントさんに「来月から単価を10倍に上げてください」とはなかなか言えないし、仮にそうなったらクライアントさんの事業が破綻してしまうことが見えている。
「仕事が手一杯でお引き受けできないので、他のライターさんにご依頼ください」とでも言おうものなら「お願いします、あなたがいないと駄目なんです! 他のライターさんだと記事の質が低すぎて!」ってそりゃあ、文字単価低いのが原因だろうと突っ込みを入れたくなるものの、長年懇意にしている相手だと関係を切るのも難しい。
今トレンドになっているアフィリエイト案件を教えたり、SEO都市伝説の誤解を解いたりして、なんとか稼げる(報酬がたくさん出せる)クライアントさんになってほしいと協力するものの、こうなると鶏と卵の関係だ。
低単価で記事を発注するからサイトの収益が上がらないのか、サイトの収益が上がらないから低単価で記事を発注してしまうのか。
愚痴が長くなってしまって申し訳ない。何にせよ、このような厄介な問題に足を踏み入れてしまう危険性もあるし、低単価で仕事を引き受けて得することは皆無である。
なにより、僕たちは命(時間)を削って書いていることを自覚しなければならない。
時給換算100円の仕事で100万円を稼ごうと思えば、1万時間も要する計算だ。1万時間だ。月20日間、8時間業務で、なんと5年もかかる。
5年もひたすら『書く』ことに専念できるのであれば、小説を書いて新人賞に投稿し続けた方がずっと成功率は良さそうに思える。
どうせ命を燃やして書くのであれば、自分が価値を感じることに、自分が楽しいと思えることに、時間を捧げよう。
(終わり)